1.はじめに |
病気やケガによる就業不能で収入が減少する、途絶えてしまうリスクについて考えた事があるでしょうか。普段から気にかけている、という人は多くないでしょう。しかし、確率は低いとはいえ起こり得ることであり、その期間が長期となった場合、世帯が経済的に大きなダメージを受ける事が予想されます。
今回はこのようなリスクをカバーする公的保障、保険商品について解説します。
2. 病気やケガで就業が不能となったときの公的保障 |
会社員・公務員が業務外の病気やケガで入院や寝たきり状態になる等、就業困難になった場合の一般的な措置として、まず年次有給休暇を取得します。その後、休みが続き職場への復帰が長引けば休職となり、通常の場合、給与が減額されたり支給されなくなります。その場合、健康保険から「傷病手当金(※1)」が支給されます。法定では標準報酬日額(月収÷30)の3分の2相当額となり、受給できる期間は連続3日休んだ後の4日目から最長で1年6ヵ月間です。大企業の場合、通常の給付金に加えて「月給の8割まで」「最長2年間」等、独自の保障が上乗せされることがあります。しかし就業規則に定められた休職期間が満了しても職場復帰が見込めない場合には、退職となり、傷病手当金の支給終了後、他に収入の担い手がいなければその世帯の生活に支障が出るでしょう。
※1:個人事業主が加入している国民健康保険には、傷病手当金の制度はありません。
3. 障害状態となったときの公的保障 |
一定の障害状態となった場合には、保険料の納付要件を満たしている前提で、公的年金から障害給付を受けられる可能性があります。障害基礎年金は障害認定日(障害状態となる病気やケガで最初に医師の診断を受けた「初診日」から1年6ヵ月後)に、障害等級1級・2級に該当した場合に支給されます。年金額は2級で約78万円、
1級で約97万円です。障害厚生年金は、同じく初診日に厚生年金の被保険者であり、障害認定日に障害等級が1級~3級である場合に支給されます。年金の年額は、障害状態となった時以前の平均的な収入と、厚生年金の加入期間によって異なります。(厚生年金の被保険者期間が25年未満の場合は、25年間加入したとみなして年金額が計算されるよう配慮されています。)また、障害等級が3級より軽い場合でも、障害手当金という一時金が支払われる場合があります。障害等級1級・2級の場合には、障害基礎年金と障害厚生年金が併せて支給されます。また、公的年金の障害給付は、収入を得ながらでも受けられます。収入金額の上限もありません。
4. 就業不能を保障する保険商品のいろいろ |
就業不能状態となった場合の「傷病手当金の支給期間」「公的年金の障害給付の金額」は、いずれも従来の生活水準を維持するのに十分なものであるとは言えません。したがって、不足する分については保険商品でカバーする必要があると言えます。最近では生命保険会社を中心に、就業不能リスクをカバーする商品が出てきています。
保障の方法として、就業不能の保障を単独で行うもの、死亡・就業不能・介護に関する各保障が一体化しているもの、等があります。一般的に収入の担い手については、死亡・就業不能・介護の保障ニーズはそれぞれ別ものではなく、同時に発生すると考えられます。世帯でこれらのリスクに備えているか、確認しておきましょう。
5. 就業不能の定義に注意! |
この保険商品は、保険金の支払事由である「就業不能状態」の定義について、しっかりと把握しておくことが重要です。そのひとつとして、一般的に「保険会社が約款で規定する状態である」ということがあります。
・病気やケガで、いかなる職業にもつけないもの
・所定の病気により、一定の障害状態が回復しない状態であること、等が代表的なものです。
これらに加えて、公的年金の障害等級や、公的介護保険の要介護度が一定以上であれば、保険金が支払われるものもあります。
6. 保険金が支払われるまでに一定の期間が必要なものも |
このタイプの保険商品の中には、保険金が支払われるまでに、60日や180日など所定の期間、保険会社が定める状態が継続していることが必要となる場合がありますので注意しましょう。また、一定の障害等級に該当していることが要件となっている場合には、その決定までに初診日から1年6ヵ月の期間を要します。
7. まとめ |
今まで述べてきた就業不能を保障する保険商品は、精神疾患は保障の対象外である点に注意が必要です。このリスクについては、傷病手当金や公的年金の障害給付によるカバーは可能ですが、一般的に民間の保険商品でカバーすることはできません。自らの健康とストレスの管理、収入を家族全体で得る等の保険以外のリスクマネジメントが必要です。