まもなく春の入学シーズン。真新しいランドセルを背負った小学1年生のかわいらしい姿を見かける機会も増えます。ただ、いわゆる「早生まれ」の子ども の親にとっては、小学校入学の喜びと同時に不安が募る時期でもあります。同じ学年でも最大で1歳近く幼いため、「授業についていけるか心配」「体が小さいみた い」など、生まれが遅いゆえの成長差が気になることでしょう。ところで、この「早生まれ」という言葉、同じ学年の中では誕生月が遅く、年を取るのも遅いはずな のに、なぜ早生まれと呼ぶのでしょうか。
■1年のうちで早い生まれが「早生まれ」
辞書によると、早生まれの定義は「1月1日から4月1日までの間に生まれたこと。その人」(岩波国語辞典第7版新版)。小学校の学年は「4月1日に始ま り翌年の3月31日に終わる」と国は定めており、4月1日に満6歳になっている子どもが入学できます。早生まれという言葉は、特にこの小学校の入学時期で話 題になることが多いです。
4月~翌年3月という年度でみれば、早生まれの子どもは、年度初めの頃に生まれた子どもに比べ、場合によっては1歳近く幼いです。たとえば4月2日生まれな ら、入学式の時点ではすでに7歳になっていますが、早生まれ、それも3月後半の生まれだと約1年後にやっと7歳になります。入学式から終業式までのほぼ1年間 は、6歳児のままで、同学年の中で最も幼い方に属します。
実はこの早生まれ、4月~翌年3月の「年度」の中で比較しているのではなく、1~12月の「年」の中で見て、早い、遅いと比べているのです。同じ年の生まれ でも、1月1日から4月1日までに生まれた子どもは、4月2日以降に生まれた子よりも1年早く小学校に入学するから「早い」というわけです。
■由来は数え年
しかしそれでも、早生まれと呼ぶのは違和感があります。それもそのはず、この言葉は、日本で60年ほど前からあまり使われなくなった「数え年」という年齢の数え方に由来します。
数え年と言われてもピンとこないかもしれないですが、日本は古くから、現在使われている「満年齢」ではなく、「数え年」で年齢を数えてきました。生まれた瞬間 (年)を1歳として、その後、正月(新年)を迎えるたびに1歳ずつ加える方式で、同じ年に生まれた人は、誕生日に関係なく、正月が来ればみんな一斉に年を 1つ取る、というものです。
■国が満年齢を指導、「早生まれ」わかりにくく
日本が年齢の刻み方を、数え年から現在使っている満年齢に変更したのは明治時代。ただ、なかなか一般の人々にまで浸透しなかったため、国は1950年(昭 和25年)に、国民は年齢を満年齢で言い表すよう心がけなければならないと規定しました。誕生日の前日をもって年齢を重ねる満年齢の考え方を、日本中に徹底させ たのです。
早生まれの人々は、大人になれば同級生よりちょっと若いなど、メリットを感じることもできます。しかし、子どもの間、特に小学校入学の頃は、体格や体力、発達などの面で同学年の子どもと差があるのではないか、と親の心配は尽きません。プロ野球やJリーグなどスポーツ選手に早生まれが少ないとされ る一方、元プロサッカー選手の中田英寿氏(1月22日生まれ)など、世界のトップに立つ選手もいます。生まれ月が子どもの将来に及ぼす影響についての評価は 様々です。生まれが早かろうが遅かろうが、希望を胸に新しい環境に飛び込むピカピカの新1年生に、心からの祝福を贈りたいですね。