年金受給者の親は、扶養に入れた方が良い?それとも?

親が年金暮らしをしている場合、条件を満たせば扶養に入れることができます。

親が扶養家族になれば、税法上では所得税などが軽減される「扶養控除」が受けられます。

また、親の年齢が75歳以下であれば、健康保険料を節約できる場合があります。

しかし、状況によっては、親を扶養に入れない方がよい場合もあります。

今回は、年金暮らしの親を扶養に入れることで変わることは何かを説明します。

年末調整や確定申告の参考にしてみてください。

税法での扶養家族・健康保険での扶養家族、それぞれの条件を確認

年金暮らしの親が扶養家族になるための条件を税法・健康保険でそれぞれ確認しましょう。

年金暮らしの親を扶養家族にする条件【税法の場合】

年金で暮らしている親を税法の扶養家族に入れると、子どもは「扶養控除」が受けられるため、所得税が軽減されます。

扶養控除を受ける場合の控除額は以下のとおりです。

出所:国税庁「No.1182 お年寄りを扶養している人が受けられる所得税の特例」

出所:国税庁「No.1182 お年寄りを扶養している人が受けられる所得税の特例」

一般扶養親族(16歳以上が対象):38万円

《親がその年の12月31日現在において70歳以上のとき》

しかし、年金で暮らしている親であれば、どんな場合でも扶養家族になるという訳ではありません。

その年の12月31日において、以下の4つの条件を満たす必要があります。

年金暮らしの親を扶養家族にする条件4つ

年金暮らしの親を扶養家族にするには、その年の12月31日において、以下の4つの条件を満たす必要があります。

1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます)など

納税者の父母、義理の両親(配偶者の父母)はともに1親等です。

2. 納税者と生計を一にしている

「納税者と生計を一にしている」というのは、親と同居している場合だけをいうわけではありません。

親と別居していても、生活費、療養費等の送金が行われていれば「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

また、親が病気療養で入院している場合も対象としてみなされます。

しかし、老人ホームなどへ入所している場合は、同居とはみなされないため、注意しましょう。

3. 年間の合計所得金額が48万円以下である

親が年金をもらっているなら、年金収入は「公的年金等に係る雑所得」に分類されます。

所得を算出するときは、以下のように「65歳未満」「65歳以上」で控除する金額が異なります。

公的年金等に係る雑所得の速算表(令和2年分以後)

公的年金等に係る雑所得の速算表(令和2年分以後) 出所:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」

出所:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」

4. 青色申告の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の専従者でない

もし親が年金暮らしをしていたとしても、それ以外の収入に、青色申告者である人の事業を手伝う「事業専従者」、または白色申告者の「専従者」として給与収入を得ていないことが条件になります。

たとえば、子どもが個人事業を営んでおり確定申告を行う場合があります。

その際、同居している親が子どもの事業を手伝いで収入を得ている場合は以下のような関係となり扶養親族には該当しません。

年金で暮らしている親が扶養家族になるのは、上記4つの条件を満たしている場合です。

なお、年金暮らしの親と別居しており、その親に対して、生活費を兄弟で送金するという場合があったとすれば、兄弟のうちの一方だけが、扶養控除の対象に親を含めることができます。

兄弟どちらも控除の対象とすることはできませんので注意しましょう。

65歳未満・65歳以上でそれぞれ扶養控除の適用対象になるには?

先ほどの章で「65歳未満」「65歳以上」では控除される金額が異なることがわかりました。

65歳未満の場合

65歳未満の場合、たとえば年金収入が60万円以下であれば、所得は「0」とみなされます。

また、年金収入が60万円超、130万円未満であれば、「年金収入-60万円」で算出した額が所得になります。

これより、65歳未満の親が扶養控除の条件である「年間の合計所得金額が48万円以下」に該当するのは、収入が108万円(48万円+60万円)までの場合です。

65歳以上の場合

65歳以上の場合、たとえば年金収入が110万円以下であれば、所得は「0」とみなされます。

また、年金収入が110万円超、330万円未満であれば、「年金収入-110万円」で算出した額が所得になります。

これより、65歳以上の親が扶養控除の条件である「年間の合計所得金額が48万円以下」に該当するのは、収入が158万円(48万円+110万円)までの場合です。

年金暮らしの親を扶養家族にする条件【健康保険の場合】

年金で暮らしている親を子が加入している健康保険の扶養家族に含めると、親が支払う国民健康保険料を節約することができます。

なお、親を被扶養者にしても、本人(健康保険加入者)が負担する保険料は同じです。

ただし、税法の扶養家族と同じく、年金をもらっている親が扶養家族に入るには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

ここでは、トヨタ自動車健康保険組合を参考に条件を説明します。

扶養家族に該当するための2つの条件

保険上の扶養家族に該当するには、次の2つの要件を満たす必要があります。

1. 扶養者と生計を一にしている(親が75歳未満)

「扶養者と生計を一にしている」というのは、税法の考え方とほぼ同じと考えて良いです。

同居に限らず、別居でも扶養に入ることは可能です。

ただし、健康保険の場合、親が子どもの加入している健康保険の扶養家族に入っていても、75歳になると外れて「後期高齢者医療制度」に加入することになります。

健康保険加入者の父母、義理の両親(配偶者の父母)のどちらも扶養家族の対象になります。

2. 収入(親)が制限額を超えていない

年金暮らしの親の対象となる年金は「老齢・遺族・障害・企業・個人など」すべてが対象となります。

親の収入が下記の全てを満たしている事が条件となります。

  • 従業員(被保険者)の年間収入の2分の1未満であること
  • 親と同居していれば年金収入が15万円未満(年180万円未満)であること
  • 別居の親に仕送りをするのであれば、親の年金収入が子からの仕送り未満であること

例)親の年金収入が月3万円未満(年36万円未満)であれば、「収入(親)+仕送り」が月6万円以上(年72万円以上)となる必要があります。

親を扶養家族に入れる場合の条件は、個々の健康保険組合で少し相違することも考えられます。

検討をする際は、詳しい内容の確認をお願いします。

年金暮らしの親の扶養を考える

扶養家族と一括りに言いますが、節税するために親を扶養家族に入れる場合、親の健康保険を節約するために扶養家族に入れる場合の2つがあります。

それぞれの条件は異なりますので、事前に必ずきちんと確認するようにしましょう。

2023-12-11